『ヴァイブレータ』(2003年、日本、8/7/07)
最近話題の寺島しのぶの作品を初めて見ました。正気と狂気を合わせ持つ孤独な女性の役を淡々と演じていて、なかなかいい感じでした。トラック運転手役の 大森南朋も独特な雰囲気があり、他の作品も見たいと思わせる俳優でした。トラックで東京と新潟を移動する短い間だけの関係。現実から切り離されている時空間だからこそ、正直に自分を出せることもあるのかな…と思いました。(★★★★☆)
(あらすじ)
早川玲は31歳のフリーのライター。彼女は以前から頭の中で響く「自分の中の声」に悩まされ、アルコールと過食嘔吐に依存していた。ある晩、ワインを買いに立ち寄ったコンビニに入ってきた1人のトラック運転手・岡部希寿に魅力を感じた彼女は、希寿の運転するトラックに乗り込み、希寿と寝る。翌朝、玲は希寿に「道連れにして」と言い、新潟に向うトラックに同乗することにした。
トラックの中でお互いのことを話し始める二人。希寿は中学もろくに卒業しないうちにチンピラになり、ヤクザと関わったこともある男。妻と娘が新潟にいる。知り合ったばかりの希寿に心を許し、「声」に悩まされることもなく安らぎを感じ始める玲。しかし、希寿が無線でトラックの運転手仲間と交信を始めた時、玲の中には「声」が聞こえ始め、吐き気に襲われる。助けようとする希寿を拒絶する玲。その夜、モーテルに泊まった二人は一緒に湯船に漬かり、希寿は玲を優しく抱きしめるのだった。
本能的な優しさを持つ希寿といつまでも一緒にいたいと感じる玲。本当は独身だということを打ち明け、「いつまでも一緒にいていい」という希寿。しかし、旅の終わりは近づいて来る。最初に二人が出会ったコンビニでトラックを降りる玲。見つめ合う二人。そして、希寿のトラックは静かに走り去って行く。「彼を食べて、彼に食べられた。ただ、それだけのことだった」と思いながら、玲は自分がいいものになった気がしていた。