『The Reader 』(2008年、アメリカ、12/30/08)
少年時代の年上の女性との熱い恋。しかし、再会したその人は戦争中にナチスに荷担した罪で被告人となっていたのでした。自分が証言すれば彼女を助けられるかもしれない…葛藤するMichael。しかし、そんな勇気がないまま、彼女は終身刑を言い渡されます。Michaelがとった償いとは、かつて彼女のベッドの上でしたように本を朗読したテープを吹き込み、刑務所に届けることでした。
影のある年上の女性Hannaを演じたKate Winslet、素晴らしい演技でした。30代から66歳までを演じていて全く違和感なく、戦争中に犯した罪で人生を翻弄される女性をきっちりと演じていました。また、少年時代のMichaelを演じたDavid Krossも、ナイーブで、それでいて少しずるい少年の心理を好演していました。特に、初めてHannaと性的な関係を持ち家に戻った時の表情が、なんとも言えずよかったです。こんな少年だったら自分の過去を全て忘れて溺れてしまうHannaの気持ちが理解できるというものです。その後、大人になってからのMichaelを演じたRalph Fiennes、いいところなし。少年時代との繋がりが余りにも希薄でがっかりしました。彼が出て来るシーンはなくてもよかったんじゃないかと思いました。特に最後の、娘とHannaの墓を訪ねるシーンは、ない方がよかったと思いました。(★★★★☆)
(あらすじ)
1950年代のベルリン、15歳の少年Michael Bergは家に帰る途中で具合が悪くなったところを見ず知らずの女性Hannaに助けてもらいます。数カ月後、全快したMichaelはお礼を言いにHannaのアパートを訪ね、二人はそこから深い関係になっていきます。20歳ほども年上のHannaに深く惹かれ、家族にも秘密で逢瀬を重ねるMichael。学校の帰りにHannaのアパートに寄り、sexをするのが日課になります。そして、ある時、Hannaが学校で何を勉強しているのか尋ねたのがきっかけで、Michaelはsexの前にHannaに本を読んであげるようになります。そんな二人の関係は一夏続き、MichaelはHannaに愛を感じるようになるのでした。
しかし、夏の終わり、Hannaは何も告げずに忽然と姿を消します。ショックを受けるMichaelでしたが、そのまま8年の月日が過ぎていきます。法学部の学生になり、ゼミの仲間と共に法廷を傍聴に行ったMichaelは、呼ばれた被告人の名前を聞いて呆然とします。第二次大戦中に強制収容所でのユダヤ人虐殺に荷担した罪でHannaが被告になっていたのです。裁判が進み、「爆撃されて燃え上がる教会にユダヤ人を閉じ込めたまま見殺しにした」罪が明らかになり、ショックを受けるMichael。そして、Hannaはその時の出来事について嘘の報告書を書いた張本人として厳しい判決を受けることになります。しかし、Michaelは二人で過ごした夏の出来事から、Hannaが文盲であることに気がつきます。そのことを証言すれば、Hannaは首謀者ではなかったことが証明できる…しかし、Michaelはそれを言い出す勇気がなく、Hannaは終身刑を言い渡されます。
数年後、自責の念から妻ともうまく行かずに離婚したMichaelはかつて暮らしたベルリンの両親の家を訪れ、Hannaに読んであげた本を見つけます。Michaelは字が読めないHannaのためにそれらの本を何本ものカセットテープに吹き込み、刑務所に送ります。Hannaはテープの声を聞き、Michaelからの贈り物に感激します。そして、図書館から本を借りて独学で読み書きを習うのでした。たどたどしい文字でHannaがMichaelに書いた手紙の中で、Hannaは昔のようにMichaelをKidと呼ぶのでした。そんなやり取りが何年も続いたある日、Michaelは刑務官から電話を受けます。終身刑だったHannaが減刑されてもうじき出所できること、HannaにはMichael以外には知り合いがないことを聞き、MichaelはHannaを迎える準備を整え初めて刑務所を訪れます。Michaelの手を取るHannaですが、Michaelは何気なくその手を振りほどいてしまいます。やはり、MichaelにはHannaがしたことが理解できなかったのです。
Hannaは全てを悟り、出所目前に首を吊って自殺を図ります。その遺体を引き取りに行ったMichaelに刑務官がHannaの遺書を渡します。そこには、これまで貯めたお金を自分が手にかけたユダヤ人の子供に渡してほしいと書かれていました。MichaelはHannaを失った悲しみに初めて涙を流します。
Hannaの遺志に従ってNYに住むユダヤ人女性を訪ねたMichaelは、その女性の頑な姿からHannaが犯した罪の深さを感じます。そして、ドイツに戻った彼は、自分の娘とHannaの墓を訪れ、自分の青春時代の思い出を娘に話し始めるのでした。