『Kukushka』 (The Cuckoo、2002年、Finland、6/10/07)
1944年9月、第2次世界大戦も終盤に向かっている頃のラップランドが舞台です。スナイパーとして戦っていたフィンランド人Veikkoは、やる気のなさに対する罰として、ドイツ兵の軍服を着せられ、岩に打ち込んだ鎖に繋がれて置き去りにされます。このままソ連の兵隊に見つかったら殺されてしまいます。鎖が打ち込まれている岩の上で火を焚いて岩を脆くして砕いたり、銃弾の中の火薬を取り出して岩を爆破しようとしたり、ありとあらゆる知恵を振り絞って、Veikkoはようやく自由の身になります。同じ頃、ソ連の兵士Ivanは飛行機からの爆撃に遭いますが、Lapp人の女Anniに助けられ一命を取り留めます。鎖を引きずったままのVeikkoは、道具を借りて鎖を切り、故郷のフィンランドに戻ろうとAnniが住む家を訪ねます。Veikkoはフィンランド語、AnniはLapp語、そしてIvanはロシア語と3つの言語が入り交じり、お互いの話していることがさっぱり分かりません。「自分の中ではもう戦争は終わっているんだ。戦う気はない。」と言うVeikkoですが、その真意はIvanには伝わりません。またVeikko自身も既に弾がなくなったライフルを後生大事に持ち歩いています。
3人の奇妙な共同生活が続く中、ある日、フィンランドは連合軍に降伏します。そのことを知らせるビラを蒔いていた飛行機が墜落し、様子を見に行ったVeikkoとIvan。Ivanは事故で死んだ乗務員の銃を手に入れます。自分のライフルには弾が入っていないことを見せようとしたVeikkoですが、IvanはVeikko自分を撃とうとしたと勘違いし、銃で撃ってしまいます。死の淵をさまよう Veikkoを生き返らせようと、Lapp人に伝わる呪術で祈りを続けるAnni。自分がしたことの重大さに気付き、外に出て涙ぐむIvan。一晩中続いたAnniの祈りが通じ、Veikkoは息を吹き返します。ほっとするIvanをAnniは優しく迎え入れるのでした。
秋の終わり、Anniが作った毛皮の服を身につけ、VeikkoとIvanは山を越えてそれぞれの故郷に戻って行きます。そして、数年後、彼らの思い出を語るAnniの横には、IvanとVeikkoによく似た二人の少年がいるのでした。
この中のどの言語も分からないので英語字幕で見ていましたが、全く噛み合ないまま進行する3人の会話はかなり面白かったです。
死にかけたVeikkoが死の国に旅立とうとしているシーン。日本では「三途の川を渡る」のでしょうが、フィンランドでは白い服を着た案内人が来て、少しずつ谷底へと山を下って行くというシーンでそれが表現されていました。太鼓を叩き、犬の鳴き声をまねたりしてVeikkoを死の国に行かせないようする Anniの祈りと相まって、とても幻想的なシーンでした。ラップランド地方の素朴な暮らしと壮大な自然も素晴らしかったです。