『Voces Inocentes』 (Innocent Voices、2004年、メキシコ、11/13/07)
1980年代のEl Salvadorの内戦。11歳の少年Chavaの目を通して、政府軍とゲリラとの熾烈な対立を描いています。12歳の徴兵年齢に達する前に、政府軍に入るか、ゲリラとして戦うかを選ばなければならない過酷な運命。しかし、そんな厳しい毎日の中にも、少年らしい淡い初恋も経験したりします。多くの子供達を巻き込んだ内戦に対する憤りを掻き立てる作品でした。あどけなさの残るChava役の少年も、芯の強い母親役の女優さんも素晴らしい演技でした。(★★★★★)
(あらすじ)
1980年代のEl Salvadorでは、クーデターによって政権を握った政府軍と対立するゲリラとの間で激しい内戦が繰り広げられていました。11歳の少年Chavaは母親と妹、弟の4人家族。父親は内戦が始まるとともに家族を捨てて、アメリカに行ってしまいました。その日以来、「the man of the house」としてしっかりするように言いつけられてきたChava 。男の子は12歳になると徴兵されるという法律があるため、Chavaももうすぐ兵士として戦わなければなりません。しかし、背も低く、まだまだ幼いChavaは、学校の同級生や幼なじみと遊んでいる方が似合います。
そんなある日、政府軍の兵士が学校に乱入し、まだ12歳になっていない少年までも徴兵していきます。Chavaの友人Antonioもその一人でした。恐怖感のあまり、失禁してしまうAntonio。しかし、兵士達は情け容赦なく少年達を連れ去って行きます。Chavaはその光景を見て、ショックを受け、またその話を聞いた母親も、彼の将来を心配します。
Chava達の村は政府軍とゲリラとがちょうどにらみ合う地点にあるので、毎晩銃撃戦に巻き沿いになっていますが、朝になると人々は普通に学校に行ったり、仕事に出たりしています。ある日、母親の弟がChava達を訪ねてきます。彼はゲリラに加わって、政府軍と戦っていました。その夜、いつになく激しい戦闘があり、隣の家に住むAngelicaが流れ弾に当たって命を落とします。
翌朝、Chavaの叔父は政府軍に徴兵される前にChavaをゲリラに入れるように母親を説得しますが、彼女は頑なに拒否します。反政府軍の放送を聞くようにとラジオを置いて、叔父は去って行きました。叔父と母親の話を聞いてしまったChavaは、反政府軍に傾倒して行きます。ある日、通学途中にラジオを聞いていたChavaは政府軍の兵士の前で禁止されている反戦歌の放送を聞いてしまいます。危うく政府軍の兵士に捕まりそうになったところを、機転を利かせた町の神父に助けられます。しかし、そのことを母親に知られ、ラジオを取り上げられてしまうのでした。
同級生の女の子Cristina Mariaに淡い恋心を抱くChava。しかし、学校を巻き込んだ銃撃戦があり、学校は閉鎖されてしまいます。町の神父もゲリラ達に荷担した罪で連行されます。することもなく河原で水遊びをするChava達はかつての友人Antonioと再会します。弱虫だったAntonioはすっかり兵士として教育され、友だちが冗談にも銃を向けて来るような少年になってしまいました。そして、Chavaの12歳の誕生日、母親は祖母はCristina Mariaも呼んでささやかなお祝いをしてくれますが、12本目のキャンドルが引き抜かれた跡を見て、Chavaは逃れられない運命を悟ります。そして、村にも少年達を無理矢理徴兵するために兵士達がやって来ます。何とか徴兵を免れたものの、いつまでも避けていられるものではありません。Chava達はゲリラに加わることを決意します。Cristina Mariaに別れを告げに町に行ったChavaは、市街戦で焼け落ちた彼女の家を見つけます。そして、そこには焼けこげた彼女のワンピースの切れ端も…。Cristina Mariaが死んでしまったと思い込んだChavaは、友人達と夜中にこっそりと家を抜け出し、ゲリラの基地を目指します。しかし、ようやく辿り着いた基地は、後を付けて来た政府軍によって銃撃され、Chava達は処刑をされるために連行されます。雨の中、処刑場所に向って行進させられる子供達。そして、辿り着いた河原で、Chavaは処刑された神父の遺体を見つけます。友だちが一人、一人と銃殺され、いよいよChavaの番になった時、ゲリラ側の攻撃が始まり、Chavaは難を逃れます。その時、Chava達の村は政府軍によって焼き討ちにあっていました。Chavaを案じながら非難したものの、心配になった母親はChavaを探しまわります。Chava達が連れて行かれた処刑場でChavaの遺体を発見できなかった母親は、もう一度家に戻ります。そして、同じように村に戻っていたChavaと再会するのでした。
最後のシーン、Chavaは母親が大事なミシンを売り払って作ったお金でアメリカに出国する手だてを得ます。家族に見送られながら、トラックの荷台に乗り込むChava。弟が12歳になって徴兵される前に迎えにくることを心に誓って、新天地へと旅立って行くのでした。