『Fugitive Pieces』 (2007年、カナダ、2/2/08)
(ポスターはまだありません。これはJacobがAthosに助けられたときのシーン。)
第23回サンタバーバラ国際映画祭での私にとっての12番目の作品です。
見知らぬ人に助けられて、家族の仲でただ一人ホロコーストを生き延びたJacobが自分の過去と向き合いながら、幸せを掴んでいくまでの物語です。原作はAnne Michaels原作の同名の小説で、日本では『儚い光』というタイトルで出版されているようです。過去を忘れるのではなく、過去と向き合うことに意味があると教えてくれる作品でした。(★★★★☆)
(あらすじ)
第2次大戦中のポーランド、7歳のユダヤ人の少年Jakob Beerは森のそばの小さな村で両親と姉Bellaと暮らしていました。そこに襲って来たナチスのユダヤ人狩り。父親の言いつけを守り、Jacobは台所のキャビネットの裏に隠れます。隙間から外をのぞくJacobの目の前で母親は殴り殺され、父親も銃で撃たれて死んでしまうのでした。そして、Bellaはドイツ兵に連れ去られます。辺りが静まってJacobは森の中に駆け込みます。そして、自分の体を首まで土中に埋めて、寒さをしのぐのでした。
数日後、近くで考古学の調査をしていたギリシャ人の考古学者AthosがJacobを発見します。Athos はJacobを連れて国境を越え、ギリシャに帰ります。ギリシャの丘の上にある小さな家で、AthosとJacobの暮らしが始まります。ドイツ兵に見つかるのを怖れ、決して家から出ようとしないJacob。夜になると、連れて行かれたBellaのことを思い出し、うなされる日々が続きます。二人が住む小さい島にもナチスがやってきますが、Athosは何とかJacobを隠し通し終戦を迎えます。
戦後、AthosはJacobを連れてカナダのトロントに移住します。しかし、彼の心の中から少年時代の悲しい体験が消えることはありませんでした。Athosの死後、作家になったJacobはAlexという女性と出会い、結婚します。社交的なAlexに魅かれながらも、Jacobは自分の過去をAlexが本当には理解してくれていないと感じます。Alexがそんな気持ちを書いたJacobの日記を読んでしまったことから、二人は別れます。
苦悩するJacobは自分の過去ともう一度向き合うために少年時代を過ごしたギリシャの島にAthosの遺灰を持って帰ります。遺灰を土に埋め、Athosとの暮らしを思い出すJacob。Jacobはトロントとギリシャを行き来しながら本を完成させ、出版にこぎつけます。
そしてトロントに戻った彼は友人の紹介でMichaelaという若い女性と知り合います。ありのままのJacobを受け入れてくれるMichaelaに安らぎを感じるJacob。夢に現れたBellaは、Jacobに「言いたいことがあるのよ。もう行きなさい。」と告げて消えていきます。自分を縛っていた過去の暗い思い出からようやく解き放たれたJacobはMichaelaと結婚し、二人はギリシャで暮らし始めます。Michaelaは妊娠し、二人は生まれた子が女の子だったらBellaと名付けることを決めます。そしてJacobのナレーション…「森の中に隠れていた時、本当にドキドキして心臓が爆発してしまうんじゃないかと思うほどだった。恐怖と闘いながら心の中でずっとBellaの名前を呼んでいた。それを今度は大事な人にあげる時が来たんだ。」