『大紅灯籠高高挂』(Raise the Red Lantern、1991年、香港、5/19/08)
日本では『紅夢』というタイトルで公開されました。中国版「大奥」って感じでしょうか。主人の寵愛を得るために対抗意識を燃やす女たちの愚かさが描かれている作品です。大学を中退し、他の夫人たちよりは教育もあるはずの頌蓮までもが、他の夫人たちと同じように嫉妬の炎を燃やしていくところなどはドロドロしていて結構楽しめました。(★★★★☆)
(あらすじ)
1920年代の中国。父親に先立たれた19歳の頌蓮(Songlian)は大学を辞め、地方の旧家に嫁いだ。かなり年上の夫にはすでに3人の夫人があり、それぞれ同じ敷地内の別々の住居に住わされていた。その夜、第4夫人となった頌蓮が住む家は内も外もあでやかな赤い提灯が灯された。それはその夜は主人から寵愛を受けることができるという印だった。しかし、主人と床に入ろうという時になって第3夫人梅珊(Meishan)からの使いが「梅珊が急病で主人を呼んでいる」と言付けに来て、二人の初夜は邪魔されます。翌朝、第1夫人大太太(Yuru)、第2夫人卓雲(Zhuoyan)の住まいに挨拶に訪れた頌蓮は、自分の身の上に同情を寄せる卓雲と打ち解けるのでした。しかし、元舞台女優だった第3夫人の梅珊は我がままで気が強く、露骨に頌蓮に競争意識を持つのでした。ここでは、主人の寵愛をもらい男子を産んだ夫人が優遇され、夫人たちも使用人たちも主人の命令には逆らえないのでした。頌蓮の身の回りの世話をするためにつけられた使用人の雁兒(Yan'er)は、実は密かに主人に可愛がられており、いつか夫人になることを夢見て頌蓮にことごとく逆らいます。そんな時、梅珊に呼びつけられ嫌々麻雀に参加した頌蓮はテーブルの下で梅珊が屋敷のお抱え医師である高医師(Dr. Gao)に足を絡めているのを見てしまうのでした。
頌蓮は屋敷の中を散歩していて、薄暗い牢屋のような部屋を見つけます。古くからいる使用人にその部屋のことを聞いてみるのですが、「昔、使われていた部屋だ」と言うだけで、詳しくは教えてもらえませんでした。そんなある日、笛の音に誘われた頌蓮は、大学時代に恋心を抱いていた第1夫人の息子と再会します。今は世界が違うとばかりによそよそしい態度を取った頌蓮ですが、部屋に戻り荷物に忍ばせてあった横笛をいとおしそうに撫でるのでした。
しかし、それから数日後、頌蓮は自分の横笛がなくなっていることに気がつきます。使用人の雁兒の部屋に押し入った頌蓮は、雁兒が自分の部屋を赤い提灯で飾り立ているのを知り愕然とします。さらに雁兒を問いつめている時、頌蓮と書かれた呪いの人形を見つけます。「字が書けない雁兒にはこの人形は作れない」と察し、誰が自分を呪っているのか問いただしたところ、それが穏やかに見えた卓雲の仕業だと知り、ショックを受けます。また、主人は笛にこだわりカリカリする頌蓮が理解できず、しばらくご無沙汰だった卓雲の家で夜を過ごすのでした。元々卓雲の本性を見抜いていた梅珊は、これまで彼女が手段を選ばずに主人の寵愛を得ようとして来たことを頌蓮に話し、気をつけるように忠告します。
この一件の後、なかなか主人の泊まりがなく使用人にまで軽く扱われたことに腹を立てた頌蓮は、「妊娠した」と嘘をつきます。主人も使用人たちもその吉報に沸き返り頌蓮は特別扱いを受けるようになりますが、卓雲の心中は穏やかではありません。しかし、生理で血が付いた下着を雁兒が見つけ卓雲に密告したことから、
卓雲の策略で頌蓮は急に医師の診察を受けることになり、その嘘が発覚します。
これまでの扱いが嘘のように謹慎を命ぜられ、頌蓮は寂しい日々を過ごします。雁兒の無礼な振る舞いに腹を立てた頌蓮は、彼女が屋敷の掟をやぶって赤い提灯を部屋に飾っていることを暴き、雁兒は罰として雪の中一晩中外に座らせれ、病気になって死んでしまいます。そんな時、寂しく二十歳の誕生日を迎えた頌蓮は一人酒で酔いつぶれ、介抱に来ていた卓雲の前でうっかり梅珊と高医師との関係を口にしてしまいます。そのことが主人の耳に入り、翌朝梅珊はあの秘密の部屋で殺されてしまいます。一部始終を目撃してしまった頌蓮はショックを受け、気が狂ってしまいます。そして翌年の夏、主人はまだ幼い娘を第5夫人として娶ります。婚礼の夜のために赤い提灯で飾られた部屋で支度をする彼女の目には、気がふれて彷徨い歩く頌蓮の姿が映るのでした。